相続と遺言

相続手続 知っておきたい相続人の範囲に関する9のポイント

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相続手続きや遺言書の作成にあたり、絶対に抑えておきたい相続人の範囲。分かりやすく9つのポイントにまとめました。

相続人範囲

相続手続きや遺言書の作成にあたり、必ず理解している必要があるのが、相続人の範囲。誰が相続人なのか正しく理解しておかないと、『相続紛争』を避けるためにした遺言書が原因で家族が揉めることになってしまったり、せっかくまとめた遺産分割協議も無効となってしまったりします。

相続人の範囲は結婚・離婚・養子・認知などがあると、少し難しくなりますが、具体的な事例を交えて、できるだけ簡単に分かりやすく、そして詳しく説明していきます。

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  1. 配偶者は必ず相続人となるの?
  2. 子どもは全員、相続人となるの?
  3. 孫やひ孫も相続人となることがあるの?
  4. 被相続人の父や母、祖父や祖母も相続人となることがあるの?
  5. 兄弟姉妹はどのような場合に相続人になるの?
  6. 離婚をしました。前妻との間の子は相続人となるの?
  7. 再婚をしました。子どもは全員とも相続人となるの?
  8. 養子縁組をしました。相続人の範囲はどうなるの?
  9. お腹の赤ちゃんにも相続する権利があるの?

01.配偶者は必ず相続人となるの?

被相続人に配偶者がいる場合には、配偶者は必ず相続人となります。

配偶者とは法律上の婚姻関係にある夫婦の相手方のことを指します。つまり婚姻届を出して法律上の夫婦であれば、その相手方は相続人となりますが、一方、内縁関係や事実婚の相手方は同居の有無や期間、互いの関係性等を考慮することなく、相続人とはなり得ません。

また離婚した相手方(つまり元夫・元妻)は相続人にはなりません。離婚後、再婚した場合は、その相手方は法律上婚姻関係にありますので、配偶者となり、相続人となります。

配偶者は先に亡くなっていたとしても、その相続分が配偶者の子ども(子連れで再婚した場合などで、被相続人との間の子ではないとき。)や父母、兄弟姉妹に移転することはありません。

被相続人に子がなく、被相続人が亡くなる前に配偶者が亡くなっている場合の相続人

①被相続人Xに子はいません。②被相続人Xの父母も亡くなっています。

配偶者Yが生きている場合は、配偶者Yと被相続人Xの兄弟姉妹が相続人なのですが、この場合、配偶者Yは既に亡くなっていますが、配偶者Yの兄弟姉妹に対して配偶者Yの相続分は移転しません。よってこの場合には、被相続人Xの兄弟姉妹だけが相続人となります

被相続人に子がなく、被相続人が亡くなる前に配偶者が亡くなっている場合の相続人

02.子どもは全員、相続人となるの?

被相続人に法律上の子どもがいる場合には、子どもは常に相続人となります。

実子か養子か、嫡出子か非嫡出子かを問いません。例えば、不倫の相手方は相続人となりませんが、その相手方のとの子どもは非嫡出子(非嫡出子とは、法律上の婚姻関係にない父母との間に生まれた子で、被相続人である父に認知がされた者。)になりますので、相続人となります。

配偶者も必ず相続人となりますので、

被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者と子どもだけが相続人となります。
配偶者が相続前に亡くなっている場合には、子どもだけが相続人となります。

被相続人に婚外子である子どもがいるときの相続人

被相続人Xに配偶者と子Aがいますので、この2人が相続人になることはすぐにわかります。しかし子Bや子Bの母は相続人に含まれるのでしょうか。被相続人Xと子Bの母とは婚姻関係にないので、相続人とはなりません。しかし被相続人Xと子Bは、被相続人Xが認知、つまり自分の子であることの届出をしていますので、被相続人Xと子Bは親子関係にあります。よって被相続人Xの相続について、子Bも相続権がありますので、今回のケースで相続人となるのは配偶者と子A、子Bの3人となります。

被相続人に婚外子である子どもがいるときの相続人

結婚の相手方に前配偶者との間の子がいる場合は、「再婚した相手の連れ子にも相続権があるのでしょうか?」を確認して下さい。

03.孫やひ孫も相続人となることがあるの?

被相続人の子どもが、相続前(つまり被相続人が亡くなるよりも前)に死亡しているなどの場合には、孫やひ孫が相続人となることがあります。

子どもが相続前に亡くなっている場合で、その子どもに子ども(つまり被相続人からみれば孫)がいるときは、孫が相続人となります。同じように相続前に子どもとその孫が亡くなっていて、ひ孫がいる場合はひ孫が相続人となります。本来の相続人である自分の親に代わって自分が相続人となるので、これを代襲相続といいます。

本来の相続人に代わって代襲して相続するには、相続人が次の3つのいずれかに該当することで相続権を失うことが必要です。相続人が相続の放棄をした場合には、同じように相続権を失うことになりますが、代襲して相続することはできません。

  • 被相続人よりも先に死亡していることによって、その相続権を失った場合。
  • 相続人の相続欠格によって、その相続権を失った場合。
  • 廃除によって、その相続権を失った場合。

相続欠格と廃除については「相続権を失う相続欠格や廃除とは?」をご覧下さい。

自分の親に代わって自分が相続人となる代襲相続の具体的な例。

被相続人Xの相続人は本来、配偶者Yと子A、子Bなのですが、被相続人Xよりも配偶者者Yと子Aが先に亡くなっていますので、子Aの子である子Cと子Dが子Aの代わりに相続人となります。ここではさらに子Dが亡くなっていますので、子Dの子である子Eが子Dの代わりに相続人となります。よって今回のケースにおいて相続人となるのは、被相続人の子である子B、孫である子C、ひ孫である子Eの3人が相続人となります。

代襲相続人

04.被相続人の父や母、祖父や祖母も相続人となることがあるの?

被相続人に子どもや孫がいないときは、父親や母親も次のときに相続人となります。

実父母か養親かの区別はなく、相続人となります。

さらに、被相続人に子どもや孫がなく、父・母の両方とも相続前に亡くなっている場合は、祖父母が相続人となります。

被相続人に子どもや代襲相続人である孫がいる場合には、父母、祖父母は相続人になりませんので、注意して下さい。

配偶者も必ず相続人となりますので、

被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者と父母だけが相続人となります。
配偶者が相続前に亡くなっている場合には、父・母だけが相続人となります。

被相続人に子どもがなく、配偶者の他に被相続人の母親と父方の祖母がいる場合の相続人は?

被相続人の配偶者Yは当然に相続人となりますが、被相続人の母親と祖母も相続人となるのでしょうか。被相続人には子どもがいないので、配偶者Yとともに母親も相続人となります。父親は被相続人よりも前に亡くなっていますが、祖母は自分の子である父親の代わりに父親の分の相続権を受け継ぐことはありませんので、祖母は相続人とはなりません。よって今回の場合、相続人となる者は配偶者Yと被相続人の母親だけとなります。

直系尊属への代襲相続は認められていない

 

05.兄弟姉妹はどのような場合に相続人となるの?

兄弟姉妹は次のときに相続人となります。

  ①被相続人に子どもや孫がいない。
  ②被相続人の父母や祖父母が既に亡くなっている。

兄弟姉妹であれば、全血か半血(半血とはいわゆる異母兄弟のことです。)を問わず相続人となりますが、法定相続分が異なります。

配偶者も必ず相続人となりますので、

被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。
配偶者が相続前に亡くなっている場合には、兄弟姉妹だけが相続人となります。

兄弟姉妹にも代襲しての相続権が認められていますが、子の代襲の場合と比べて違いがあります。

被相続人Xが亡くなる前に兄弟姉妹が亡くなっている場合で、その兄弟姉妹に子ども(つまり被相続人からみれば甥や姪)がいるときは、甥や姪が代襲して相続人となります。しかし甥・姪が先に亡くなっていても、甥・姪の子どもである又甥、又姪は相続人とはなりません。今回の場合では、被相続人Xの相続人は姪だけの1人となり、甥の子どもである又甥には相続権はありません。

兄弟姉妹の代襲相続と再代襲

兄弟姉妹の他に、異母兄弟がいる場合の相続人はどのようになるのか?

被相続人Xに弟と妹Aの兄弟姉妹がいて、被相続人には配偶者も子もいませんので、弟、妹Aは相続人となります。妹Bは被相続人Xからみると父を同じくする兄弟姉妹、つまり異母兄弟にあたります。異母兄弟といえども兄弟姉妹ですので、妹Bも相続人となります。しかし法定相続分、兄弟姉妹間では等分となるのですが、異母兄弟(いわゆる父だけを同じくするので“半血”(なんか嫌な言い方ですよね。)に当たります。)ではその半分が法定相続分となります。今回のケースでは弟、妹A、妹Bの3人が相続人となり、その法定相続分は弟と妹Aはそれぞれ5分の2、妹Bは5分の1となります。

兄弟姉妹の他に、異母兄弟がいる場合の相続人はどのようになるのですか

06.離婚をしました。前妻との間の子は相続人となるの?

離婚しても自分の子どもは子ども。相続人となります。

離婚をするとその配偶者との婚姻関係は終了するので、離婚の相手方である元配偶者は相続人にはなりません。しかし終了するのは配偶者との関係だけですから、婚姻中に配偶者との間に子どもが生まれていた場合、離婚して子どもはその配偶者が引き取ったうえで戸籍も別にし、そして自分も再婚して新しい家庭を持ちその相手と子どもが生まれたとしても、親子関係は終了しません。よってその子どもにも相続権があります

前妻との間に子どもがいるが親権は元妻、戸籍も別にしたし、その子とは長いこと会っていないけど相続人なの?

①被相続人Xと元配偶者Zとが結婚している間に子Aが生まれた。②元配偶者Zとの離婚が成立。③子Aの親権は元配偶者Z、元配偶者と子Aとは戸籍を分けたし、長いこと会っていません。④被相続人Xも再婚して現配偶者Yの間で子Bが生まれました。

被相続人Xの現在の配偶者Yと子Bは当然に相続人となります。元配偶者Zは既に離婚をしているので、相続人にはなりませんが、被相続人Xと子Aは元配偶者Zとの婚姻関係にあるときに生まれた子ですので、当然に被相続人Xと子Aは親子となります。この親子関係はたとえ元配偶者Zと離婚をしても、被相続人Xとは戸籍が別になっても、親権がなくとも、何ら変るものではありません。よって今回のケースでは相続人となるのは現配偶者Y、子B、子Aの3人となります。

別れた妻との間の子も相続人?

07.再婚をしました。子どもは全員とも相続人となるの?

親子関係にある子どもは相続人となります。

再婚して、相手方である新しい配偶者との間に子どもが生まれたときは、その子どもには相続権があります。しかしその配偶者の連れ子がいた場合はその子どもは、被相続人とは親子関係がありませんので、相続人にはなりません。

新しい配偶者のとの再婚した相手の連れ子にも相続権があるのでしょうか?

①被相続人Xは配偶者Yと結婚しました。②配偶者Yには元配偶者Zとの間の子Aがいます。③被相続人Xと配偶者Yと子Aの3人で最初は暮らしていました。その後2人の間で新しく子Bが誕生し、4人家族として新しい家庭を築いています。

被相続人Xと配偶者Yとの間の子である子BはXと親子関係にあります。一方、被相続人Xと子Aの母であるYとは結婚をしていますが、被相続人Xと子Aとの間には、親子関係が生じません。たとえXと子Aが同居し、Xに養われていたとしても、その事実だけで親子関係が生じるものではないからです。このケースでは、被相続人Xの現配偶者であるYと子Bは相続権がありますが、子Aには相続権がありません。

再婚した相手の連れ子にも相続権があるのでしょうか

08.養子縁組をしました。相続人の範囲はどうなるの?
(ここでは普通養子縁組に限り説明します。)

養子縁組をすると養子は養親の相続人となります。

養子縁組とは届出等をすることで養親と養子とに親子関係を生じさせるものです。そして養子縁組が成立して、養親養子間で新たな親子関係が発生しても、実親と養子の親子関係は終了することなく、引き続き存続することになります。例えば、養親が亡くなって相続が発生したときは、養子は相続人となりますし、実父母が亡くなって相続が発生しても、相続人となります。

養子縁組をすると実父母からの相続は受けられなくなるの?

養親と養子Aが養子縁組すると新しく養親と養子Aについて親子関係が形成されます。一方、実父母と養子Aとの親子関係は、たとえAが養子となったとしても、維持されたまま変ることはありません。よってこの場合では、養子Aは養親の相続人にもなりますし、実父、実母の相続人にもなります。

一方、養子縁組は届出等をすることで解消することもできます。その場合は養親養子間の親子関係は終了することになります。

養子縁組をしても実父母の関係

再婚と同時に相手の連れ子と養子縁組しました。その後離婚をしたのですが、その連れ子は相続人になるのでしょうか?

①再婚の相手方に前の結婚のときに生まれた子どもAがいました。②再婚と同時にその子どもAと養子縁組をしました。③その後再婚相手とは離婚をしました。

被相続人Xが配偶者Yと結婚しただけでは、その相手方の子どもである子Aとは、親子関係が生じません。しかし今回の場合は、再婚と同時に養子縁組をしているので、婚姻を原因ではなく養子縁組を原因として親子関係が生じます。そしてその後、被相続人Xと配偶者Yとが離婚によって婚姻関係が終了しても、養子縁組による親子関係は終了しません。よって離婚後もその子Aとは離縁の手続きにより養子縁組を解消するまで親子ですので、相続人となります。

再婚と同時に相手の連れ子と養子縁組しました。その後離婚

別れた妻が再婚し、妻との間の子も再婚相手と養子縁組しました。養子縁組をした子はもう相続人ではないの?

①被相続人と配偶者Yが結婚していた間に子Aが生まれました。②被相続人Xと配偶者Yは離婚して、元配偶者Yは子Aを引き取りました。③その後、元配偶者Yは子Aを連れて、再婚相手Zと再婚しました。④子Aと再婚相手Zは養子縁組をしました。

被相続人Xと子Aとの親子関係は、離婚をしても変りません。そして再婚相手Zと子Aが養子縁組をしたことで、Zと子Aは親子関係にあります。養子縁組をしたことで被相続人Xと子Aの親子関係は終了するように思えますが、子Aが養子縁組をしても被相続人Xとの親子関係はそのまま維持されます。よって子Aは被相続人Xとの関係でも相続人となりますし、養親にあたる再婚相手Zとの関係でも相続人となります。もちろん実親である元配偶者Yとの関係でも同様です。

 別れた妻が再婚。子どもが再婚相手と養子縁組をした

養子を迎え入れました。養子の子どもは相続人となるの?

①親戚の子Aを養子として迎え入れることしました。②その親戚の子Aは30才で初婚の相手を亡くして、初婚の相手との間に未成年の子Bがいます。③養子となった後に、その親戚の子は再婚して、戸籍も別にして、相手方の名字に変更しました。④再婚した相手方との間に子Cが生まれました。⑤その後、親戚の子Aは若くして亡くなってしまいました。

被相続人は子Aとは養子縁組をすることで親子関係が生じることとなります。子Aとその子どもBは親子なのですが、被相続人との関係では親族関係は生じません。しかし養子となった後に生まれた子どもCとの関係においては親族関係が生まれます。つまり被相続人の子Aの子どもBも子どもCはいずれも孫(「子どもの子ども」という意味です。)にあたる立場なのですが、法律的には子どもBは代襲しても相続人にはなりませんが、子どもCは代襲相続人となります。よって今回のケースでは、被相続人の養子である子Aが相続前に亡くなってしまったので、子Aの子どもBCのうちBだけが、子Aを代襲して被相続人の相続人となります。

養子縁組をした養子に連れ子がいました。養子が先に亡くなったときは、その連れ子が代襲して相続人

09.お腹の赤ちゃんにも相続する権利があるの?

お腹の赤ちゃんにも相続権はあります。

民法886条1項に「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」との規定があります。これはお腹の赤ちゃんにも相続権を認めるものであり、相続のほか、遺言書に基づく遺贈を受取る権利もありますし、損害賠償請求権も認められています。但し、赤ちゃんが残念ながら生まれる前に亡くなってしまった場合は、これらの権利は認められません。代わりに母親が代襲することもありません。

お腹の子が相続したのに、生まれる前に亡くなってしまったときの相続人は?

被相続人Xが亡くなったときに、妻のお腹に赤ちゃんがいる場合、配偶者である妻と子どもであるお腹の赤ちゃんに相続権があります。このときの法定相続分は配偶者と赤ちゃんがそれぞれ2分の1ずつとなります。しかし残念ながら死産となってしまった場合には、被相続人に子どもがいなかったことと同じになり、配偶者と被相続人の父母が相続人となり、配偶者3分の2、父母6分の1ずつが法定相続分となります。

お腹の赤ちゃんにも相続する権利はある。

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