相続登記で提出した戸籍謄本などの書類は
返却してもらえるのか?
相続登記の申請をするときには、戸籍謄本や遺産分割協議書などを法務局に一緒に提出する必要があります。これらの書類は一部を除いて原本返却の手続きをすることで、登記申請が完了した時点で返却してもらうことができます。また、法定相続情報一覧図を提出すると戸籍謄本等の提出を省略することができます。
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戸籍等の原本還付と相続関係説明図
相続登記を申請する際に、被相続人や相続人の戸籍謄本(除籍や改製原戸籍などを含む)の原本を法務局に申請書と一緒に提出する必要があります。これらの戸籍謄本は少なくても2、3通、多い場合には10通以上にわたることもありますので、必要な戸籍を収集するのに手間も費用も掛かっています。そこであらかじめ戸籍謄本について原本返却の手続きをとると、登記申請が完了すると登記で利用した戸籍の原本を戻してくれる原本還付制度があります。
戸籍等について原本還付を法務局に請求するには、①登記申請の時点であらかじめ申出ること、②相続関係説明図を添付することが必要です。登記が完了した時点あとから原本還付の申し出をしても受付けてもらえませんので、注意が必要です。もちろん登記の窓口の方が「原本還付をしなくてもいいのか」注意を促してくれることもありますが、それはあくまでも善意ですので、過度な期待は禁物です。
相続関係説明図とは、 相続人と被相続人がどのような関係にあるのか、 一目で分かるように図式化したもので、以下のような事項を記載します。
被相続人に関する記載事項
- 被相続人の氏名
- 生年月日と死亡日
- 本籍地
- 住所
- 相続不動産の登記簿に記載されている住所
相続人に関する記載事項
- 相続人の氏名
- 続柄
- 生年月日
- 住所
その他の記載事項
- 被相続人よりも死亡している者の氏名と生年月日と死亡日、死亡した旨
- 相続放棄によって相続人にならなかった者の氏名や生年月日、相続放棄をした旨
以下の参考図は、亡甲山太郎の法定相続人は、甲山花子と乙山月子の2人で、遺産分割によって相続不動産を甲山花子が取得する場合のものです。乙山月子の名前の上に「(分割)」とは相続不動産を取得しなったということを意味します。なお、甲山一男は、相続放棄をしたので相続人ではないですが、相続放棄をしたことが分かるように記載をします。甲山二郎は甲山太郎が死亡する前に亡くなっている者ですが記載します。
POINT
- 相続登記申請で利用する被相続人や相続人の戸籍謄本などは、原本還付の手続きを登記申請時にすることで、登記完了時に原本を返却してもらうことができます。
- 申請時に登記申請書と一緒に戸籍謄本等の原本と相続関係説明図を提出することで、原本還付手続きはできます。
法定相続情報証明制度
平成29年5月29日より、法務局において各種相続手続きに利用することができる法定相続情報証明制度が開始されます。
法定相続情報証明制度とは、法務局に被相続人の戸(除)籍謄本や相続人の戸籍謄本や住民票の写しなどの戸籍関係の書類等とそれらに基づいて作成した相続関係を説明する一覧図を提出すると、法務局がそれらの内容を確認して、認証文付きの法定相続情報一覧図の写しを無料で交付してくれます。
現在、相続手続きを行うには、不動産の相続登記をはじめ各金融機関や年金事務所、税務署などに対して被相続人の戸籍謄本等の一式をそれぞれ提出する必要があります。しかし今後は、法務局が作成してくれた認証文付きの法定相続情報一覧図の写しを利用することで、戸籍謄本等の書類一式を何度も提出する必要がなくなる予定です。
法定相続情報一覧図の写しは、手続きに必要な分だけ複数枚発行してくれますので、いままでのように各機関ごとに戸籍謄本等の書類一式を確認するのに預けたりする必要がなくなるので、相続手続きが早期に進めることができることが期待できます。
もちろんこの法定相続情報一覧図は相続不動産の相続登記手続きでも利用できますので、戸籍謄本と相続関係説明図の提出を省略して、一覧図の写しを提出すればよくなります。
関連情報
- 法定相続情報証明制度は、平成29年5月29日から全国の法務局で開始される制度です。手続きの方法や法定相続情報一覧図の写しの交付については、「法定相続情報証明制度がスタート」を参考にしてください。
POINT
- 相続不動産の登記申請手続きにおいても、法定相続証明情報一覧図は利用可能です。一覧図の写しを提出することで戸籍謄本等と相続関係説明図の提出を省略することができます。
遺産分割協議書、印鑑証明書、住民票の写し等の原本還付
遺産分割による相続登記を申請する際には、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書の原本や不動産を取得する相続人の住民票の写しを法務局に申請書と一緒に提出する必要があります。これらの書類についても申請時に原本還付の手続きをすることで、相続登記が完了した時点で、各種書類の原本を返却してもらうことができます。特に遺産分割協議書などは相続不動産に関する事項のほか、現金や預貯金、株式、自動車などの取得についても取り決めていることも多いでしょうから、原本を返却してもらう必要性は特に高いと思います。
原本還付の手続きは、還付を希望する書類をコピーして、コピーしたものには、「原本に相違ない」と記載して、申請人による署名押印をします。そして登記申請書と一緒に原本とコピーを提出します。この手続きを申請時にすると相続登記が完了と同時書類を返却してもらえます。なお、登記が完了した後に原本還付の申し出をしても、返却してもらうことはできませんので、注意してください。
原本還付できる書類は以下のとおりです。
- 遺産分割協議書
- 特別受益証明書
- 相続分譲渡証明書
- 上記に付属する相続人の印鑑証明書
- 住民票の写しまたは戸籍の附票
- 相続放棄申述受理証明書
- 遺産分割に関する調停調書の正本
POINT
- 相続登記申請で利用する遺産分割協議書や相続人の印鑑証明書、住民票の写しなどは、原本還付の手続きを登記申請時にすることで、登記完了時に原本を返却してもらうことができます。
- 原本還付手続きは、返却が必要な書類をコピーし、コピーに「原本と相違ない」と記載し、申請人が署名押印して、登記申請書と一緒に原本とコピーを提出することでできます。
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