相続と遺言

相続手続 相続人となれない特別な理由 欠格・廃除とは?

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本来であれば相続人となるはずの立場の者が、相続権を失うこととになる欠格や廃除。相続手続きや遺言書の作成の前に、欠格・廃除について知っておきたい5つのポイントをまとめました。

相続欠格廃除

どうしてもこの者だけには相続させたくない、という考えを持つ被相続人の方も少なくありません。遺言書でいくら相続させなくても、遺留分によって結局自分の財産を手に入れる不本意なこともありますが、もしかしたら欠格や廃除の事由に該当して相続人となる資格を失っている場合もあります。また、反対に遺言書を発見した相続人が、悪気はないが遺言書に加筆をするなど手を加えたことで、相続人の資格を失うこともあります。 相続手続きや遺言書作成の前に、知っておきたい相続欠格や廃除について説明いたします。

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  1. 相続欠格とは?
  2. 欠格事由とは?
  3. 廃除とは?
  4. 廃除の要件とは?
  5. 相続欠格と廃除はここが違うので注意!

01.相続欠格とは

相続の欠格事由に該当すると本来であれば相続人となるはずの者も、相続人となる資格を失ってしまうという制度です。つまり相続の欠格事由に該当したものは、相続人になることはできません。

そしてその欠格事由に該当する者は、相続を受けることができないだけでなく、遺言書で遺贈を受ける旨が書かれていても、遺贈を受取ることはできません。

本来なら相続人となれるはずの者について、相続させることにふさわしくないという事情があるときに、相続人となる資格を失うことになり、その事情とは法律で欠格事由として定められています。

なお、相続欠格になった相続人に子がいる場合には、代襲によりその子が相続人となります。代襲相続については『孫やひ孫も相続人となることがあるの?』をお読み下さい。

02.欠格事由とは

欠格事由は以下のとおり定められており、大きく2つに分けられます。まずは被相続人や他の相続人に対する身体的危害を加えたことに関するもの。2つ目は被相続人の遺言について不当な干渉行為をしたことを理由とするものです。

被相続人や他の相続人に対する身体的危害

1.故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

『故意』
故意を必要としますので、過失致死罪や傷害致死罪は含まれません。

『相続について先順位若しくは同順位にある者』
民法887条・889条によって相続人となる者の順位が定められています。1番:子、2番:父母、3番:兄弟姉妹、配偶者は他に相続する者がいるときは、その者と同順位されております。
これらを踏まえると、先順位の者とは、被相続人の父母(第2順位)による被相続人の子(第1順位)に対する危害や被相続人の兄弟姉妹(第3順位)による父母(第2順位)に対する危害が該当します。また、同順位の者とは、被相続人の長男による長女(同じ第1順位同士に当たります。)に対する危害や被相続人の子による被相続人の配偶者に対する危害が該当します。

子Aが父を殺害しようとしたケースでは、

子Aは父が亡くなり父の相続が発生しても、被相続人である父に対する危害を加えたということで、欠格事由に該当します。そして母が亡くなり母の相続発生時においても、子Aは同順位の者に対する危害を加えたということで、母の相続でも相続人にはなることはできません。

被相続人である父を殺害しようとした者は母の相続でも欠格事由にがいとうする

『死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者』
殺人罪または殺人未遂罪・予備罪を犯し、確定有罪判決を受けた者です。相続が開始した後に有罪判決が確定した場合も含まれます。

2.被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者

被相続人の殺害について犯人を知っているにも係わらず、それを相続人という近しい関係の親族が捜査機関等に連絡しないというのは倫理的に問題があるということで、民事上の制裁を加える趣旨の制度です。

但し、次の例外があります。
①告発・公訴すべき者が是非分別できない場合
②殺害者等が自分の配偶者または直系血族であった場合

『直系血族』
殺害者の父母、祖父母、子、孫に当たる場合のことです。
血縁関係にある近しい者が警察などの捜査機関に対して告訴することを強いることは、酷であるという法律上の判断ということです。

Aが被相続人である父を殺害しようとした場合では、

配偶者と直系血族の母及び子は殺害者であるAについて告訴しなくても欠格事由に該当しませんが、兄弟姉妹であるBは告発しないと欠格事由に該当することになります。

配偶者と直系血族は告発しなくても相続欠格事由に該当しない

遺言書についてした不当な干渉行為

3.詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

4.詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

5.相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、隠匿した者。

『偽造・変造・破棄・隠匿』
偽造とは相続人が被相続人名義の遺言書を作成することです。変造とは被相続人が作成した遺言書を相続人が改ざんすることです。破棄とは遺言書を破り捨てたり、燃やしたり字を読めなく黒く塗りつぶすことなどを指します。隠匿とは遺言書の発見を妨げることです。

これらの定めは遺言書に関して著しく不当な干渉行為をした相続人に対し相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとすることを趣旨としています。よって遺言書の破棄隠匿行為が不当な利益を目的とするものでない場合や遺言書の偽造又は変造が遺言書を有効となるようする目的である場合は欠格事由に該当しないという判断を裁判所はしています。

03.廃除とは?

被相続人が、相続人となる者に対して、相続させることを望まないときは、家庭裁判所に請求して、その者の相続権を失わせる制度です。

被相続人が、一部の相続人に対して相続させることを望まないとき、遺言書を作成してその者の相続分をゼロとすれば、一定の効果を見出せます。しかし配偶者や子、父母などの相続人となる者は遺留分を有していますので、たとえその者に対する相続分をゼロとしても、遺留分減殺請求権を行使することで一定の相続分を回復することが可能になります。
そこで被相続人に対して虐待や重大な侮辱をした者や著しい非行があった者の相続権を奪うための手続きになります。よってこの廃除は被相続人の意思表示だけでは足りず、裁判所に請求して、廃除に値する理由があるのか認めてもらう必要があります。

なお、廃除になった相続人に子がいる場合には、代襲によりその子が相続人となります。代襲相続については『孫やひ孫も相続人となることがあるの?』をお読み下さい。

04.廃除の要件とは?

廃除をするための要件は次のとおりです。

遺留分を有する相続人となる者が、被相続人に対して虐待をし、もしくは重大な侮辱を加えたこと、または相続権を失わせる者にその他著しい非行があったこと

『遺留分を有する相続人となる者』
遺留分を有する相続人となる者とは、配偶者、子、父母のことで、兄弟姉妹は含みません。

廃除の制度趣旨は遺留分を有する相続人に対する相続権を失わせるものですので、排除の対象となる者は遺留分を有する相続人だけが対象となります。つまり兄弟姉妹に遺留分がありませんので、対象とはなりません。もし、兄弟姉妹の相続権を失わせたいと考えるのであれば、遺言書を作成することで、その思いは実現できます。

『その他著しい非行があったこと』
非行は必ずしも被相続人に対するものである必要はありません。

廃除の手続きは、生前に裁判所に請求することでも可能ですし、遺言書を作成しその中で、廃除の意思表示をすることも可能です。

05.廃除と相続欠格とはここが違う?

比較項目 相続欠格 廃  除
効  力

欠格事由に該当すると
当然に相続人となる資格を失う。

廃除の審判が確定すると
直ちに相続人となる資格を失う。

手 続 き 不要

生前に裁判所に廃除の審判の請求
又は
遺言書によって意思表示をして
死後に裁判所に廃除の審判の請求を
する必要がある。

相続権の回復 回復は想定されていない。

生前に裁判所に廃除取り消しの
審判の請求
又は
遺言書によって廃除の取り消しの
意思表示をすることができる。

遺贈の可否

 遺贈を受取ることはできない。  遺贈を受取ることができる。

相続欠格の場合

相続人となる者が欠格事由に該当すると、法律上当然に相続権を失うことになり、当然に効力が発生しますので、手続きは特段必要ありません。

被相続人が生きているうちに、自己の意思で許したとしても、相続権は回復しませんし、被相続人が遺言書で財産を遺贈する旨を残したとしても、その者は遺贈を受けることはできません。

廃除の場合

相続人となる者が廃除の要件を満たすような行為をした場合に、被相続人は生前に裁判所に請求をするか、遺言書に廃除する旨を残し、死後に遺言執行者が裁判所に請求する必要あります。その後裁判所による廃除の審判が確定することによって直ちに効力が発生しますが、審判確定後に戸籍法上の届出をすることが必要です。

廃除は被相続人の意思が尊重されますので、生前に裁判所に請求しその者の廃除が認められたとしても、被相続人は生前に廃除の取り消しをすることもできますし、遺言書によって取り消すこともできます。さらに遺言書のなかで、廃除をした者に対する財産の遺贈することもできます。

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