相続と遺言

自筆証書遺言を法務局で保管してもらう4つのステップ

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遺言書を法務局に保管したい人

2020年7月10日から遺言者が作成した自筆証書遺言を全国各地の法務局で保管してもらえる制度が開始する。
法務局では遺言の原本の保管はもちろんのこと画像データも保管してくれるので、大規模災害などの万一の事態が生じても遺言の内容は保全される。

遺言者が法務局に遺言書を保管してもらうための具体的な4つの手続きを解説する。

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STEP1 要式に従った自筆証書遺言を作成する
STEP2 保管申請の準備をする
STEP3 法務局に自筆証書遺言の保管申請をする
STEP4 遺言保管後の各種手続き
   ◇ 遺言者が預けた遺言書を閲覧する
   ◇ 遺言書の保管を撤回する
   ◇ 変更事項を届け出る

STEP1 要式に従った自筆証書遺言を作成する

1.自筆証書遺言の作成方法

この制度で保管の申し入れができる遺言は、自筆証書遺言に限られる。自筆証書遺言は、遺言の本文について遺言者が自筆で作成し、署名押印するなど厳格な要式が定められているので、それに従った方法で作成する必要がある。

なお、2020年7月より自筆証書遺言の作成方法が変更となり、財産目録についてはパソコンで作成した文書や通帳などの写しも使用することができるようになった。詳しくは自筆証書遺言の方式緩和を確認。

2.保管のための遺言書の形式的な注意事項

この制度は、法務局は、自筆証書遺言の原本を保管するとともに画像データも併せて作成し保管することになるため、画像データを作成するための形式的な注意事項があるなお、法務局では、自筆証書遺言の形式面については審査の対象となるが、遺言の内容については審査の対象外であり相談には一切応じることはない

  • 用紙
    • A4の大きさのものとする。
    • 画像データは白黒で出力されるため、文字の判読を妨げる地紋や彩色等のないものを使用する。
  • 紙質
    • 紙質は問わないがスキャナー取り込みすることと長期間の保管することを踏まえた用紙が望ましい。
  • 書字方向
    • 縦書きでも横書きでもどちらでも構わない
  • 余白を設ける
    • 上:5mm以上 下:10mm以上 左:20mm以上 右:5mm以上
    • 余白部分には、ページ数や変更の記載を含め、何も記載しないようにする。
  • ページ数を記載する
    • 各ページにページ番号を記載する。
  • 紙面の記載面
    • 片面のみに記載する。
    • ただし2020年7月10日から6か月間の間は経過措置として、両面に記載された遺言書も保管の対象とする。
  • 外国語で記載されている遺言
    • 外国人等の遺言者が、外国語で記載した遺言も保管の対象である。
    • ただし日本語による翻訳文は必要である。
    • 加えて保管の申請書は、日本語での記載が必要である。
  • 財産目録について
    • 自筆によらない(コピー等)財産目録の場合にも、余白の設定とページ数の記載は必要。

STEP2 保管申請の準備をする

1.保管申請することができる者

遺言者本人に限定される。

代理人(司法書士や弁護士などを含む)による保管申請は認められていない
遺言者本人が法務局に出向くことができないような、やむを得ない事情等があっても代理申請は認められず、保管申請することはできない。
なお、介助のために付添人に同伴してもらうことは構わない。

2.保管申請する法務局を決める

① 遺言書保管所

全国の全ての法務局で遺言を保管してくれるものではなく、遺言書保管所として指定された法務局に限られる。

東京周辺の遺言書保管所
東京都:東京法務局・本局(九段下)板橋出張所八王子支局府中支局西多摩支局
埼玉県:さいたま地方法務局・本局(浦和)川越支局、熊谷支局、秩父支局、所沢支局、東松山支局、越谷支局、久喜支局
神奈川県:横浜地方法務局・本局(横浜)、川崎支局、横須賀支局、湘南支局、西湘二宮支局、相模原支局、厚木支局

その他の地域の遺言書保管所一覧

② 保管の申請ができる遺言書保管所

以下のいずれかを管轄する遺言書保管所(法務局)であること。
 ◇ 遺言者の住所地
 ◇ 遺言者の本籍地
 ◇ 遺言者が所有する不動産の所在地

管轄は法務省HPの遺言書保管所管轄一覧で確認する。

ただし、すでに他の遺言書を遺言保管所に預けてある場合には、その遺言保管所に限られる。

③ 具体例

遺言者Aは、東京都中央区に居住していて、武蔵野市に本籍地があり、豊島区に位置する不動産を所有している場合

住所地:中央区 ⇒ 管轄:東京法務局・本局
本籍地:武蔵野市 ⇒ 管轄:府中支局
不動産の所在地 ⇒ 管轄:板橋出張所

遺言者Aは、東京法務局・本局、府中支局、板橋出張所のいずれかの遺言書保管所に保管申請をすることができる。

3.必要書類を用意する

  • 遺言書 
    封筒に入れて封を閉じない。ホチキスなどで綴じない。
  • 住民票の写しまたは戸籍謄本(作成後3か月以内のもの) 
    本籍・筆頭者の記載があるもの
  • 本人確認書類(有効期限内の顔写真付きの身分証明書)
    マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書、パスポート、乗員手帳、在留カード、特別永住者証明書など
  • 手数料 
    1通につき3,900円(保管年数や枚数に関係なく、1通あたりの手数料)
  • 日本語による翻訳文 
    遺言書が外国語で作成されている場合

STEP3 法務局に自筆証書遺言の保管の申請を行う

1.保管申請の窓口予約をする

遺言書保管所の窓口で円滑な手続きをするために、保管を希望する遺言書保管所に予約をする。
予約をしなくとも申請できる場合もあるが、長時間待たされたり、当日中に申請手続きが完了しないこともあるので、予約することをお勧めする。
なお、2020年7月1日から予約を開始することができる。

予約方法

2.保管申請書を作成する

保管申請書は遺言書保管所の窓口や法務省のホームページで取得できる。

遺言書の保管申請書継続用紙  (記載例・注意事項

申請書には、遺言者の氏名、住所、本籍、筆頭者の氏名、生年月日などの自身の情報を記載するほか、受遺者(相続人など)や遺言執行者の氏名、住所、生年月日、会社等法人番号を記載する必要があるので、あらかじめ情報をまとめておくなどの準備をしておくことが望ましい。

3.法務局に保管の申請をする

予約した日時に法務局(遺言書保管所)の窓口に行く。
手数料は収入印紙で納付することになるので、遺言書保管所内もしくは近隣の印紙販売窓口で購入し、手数料納付用紙に貼っておく。

4.手続き終了

保管申請の手続きが完了すると、遺言書保管所から保管証が発行される。
保管証には、遺言者の氏名、生年月日、遺言保管所の名称と遺言保管番号が記載されている。保管証は再発行されないので大切に保管しておく

生前に遺言者が遺言書の閲覧、保管申請の撤回、変更の届出をするときや、死亡した後に相続人や受遺者が遺言書情報証明書の交付を請求等するときに、保管証があると便利である。

STEP4 遺言保管後の各種手続き

1.遺言者が預けた遺言書を閲覧する

遺言者は、法務局(遺言書保管所)に遺言を保管してもらっている場合には、いつでも遺言書の画像データを閲覧したり、遺言書の原本を閲覧することができる。

① 閲覧請求できる者

遺言者本人に限定される

② 閲覧できる法務局(遺言保管所)

遺言書の画像データを閲覧する場合 ⇒ 全国の遺言保管所が対象
遺言書の原本を閲覧する場合 ⇒ 遺言書の保管申請をした遺言書保管所に限定

③ 必要書類などを用意する
  • 本人確認書類 (有効期限内の顔写真付きの身分証明書)
    マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書、パスポート、乗員手帳、在留カード、特別永住者証明書など
  • 手数料 
    画像データの閲覧 1回につき1,400円
    遺言書原本の閲覧 1回につき1,700円
  • 変更が生じた証明書(住民票の写し、戸籍謄本など)
    保管時から氏名や住所、本籍など変更事項がある場合で、変更の届出をしていないとき
④ 閲覧請求の窓口予約をする

遺言書保管所の窓口で円滑な手続きをするために、閲覧を希望する遺言書保管所に予約をする。
予約をしなくとも申請できる場合もあるが、長時間待たされたりすることもあるので、予約することをお勧めする。

予約方法
⑤ 閲覧請求書の作成する

閲覧請求書は遺言書保管所の窓口や法務省のホームページで取得できる。

遺言者の閲覧の請求書 (記載例・注意事項

請求書には、遺言者の氏名、住所、本籍、筆頭者の氏名、生年月日などの自身の情報を記載する他、遺言が保管されている遺言保管所の名称と保管番号などを記載する必要があるので、保管手続時に交付された保管証があると簡単である

2 遺言書の保管を撤回する

遺言者が遺言書の内容を変更したい場合や遺言書の保管を取り止めたい場合には、遺言書の保管を撤回することができる。なお、遺言書の保管の撤回しても、遺言書自体は有効である。

① 遺言保管の撤回ができる者

遺言者本人に限定される

② 保管の撤回ができる法務局(遺言保管所)

遺言書の保管申請をした遺言保管所に限定される

③ 必要書類などを用意する
  • 本人確認書類 (有効期限内の顔写真付きの身分証明書)
    マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書、パスポート、乗員手帳、在留カード、特別永住者証明書など
  • 手数料 不要
  • 変更が生じた証明書(住民票の写し、戸籍謄本など)
    保管時から氏名や住所、本籍など変更事項がある場合で、変更の届出をしていないとき
④ 撤回申請の窓口予約をする

遺言書保管所の窓口で円滑な手続きをするために、撤回を希望する遺言書保管所に予約をする。
予約をしなくとも申請できる場合もあるが、長時間待たされたりすることもあるので、予約することをお勧めする。

予約方法
⑤撤回書を作成する

撤回書は遺言書保管所の窓口や法務省のホームページで取得できる。

遺言書の保管申請の撤回書 (記載例・注意事項

撤回書には、遺言者の氏名、住所、本籍、筆頭者の氏名、生年月日などの自身の情報を記載するほか、遺言が保管されている遺言保管所の名称と保管番号などを記載する必要があるので、保管手続時に交付された保管証があると簡単である

3.変更事項を届け出る

遺言者の氏名や住所、本籍などに変更が生じた場合には、その旨を届け出る必要がある。また、遺言者以外の受遺者(相続人など)や遺言執行者の氏名や住所等などに変更が生じた場合にも届け出ることが必要である。

① 変更届出をすることができる者
  • 遺言者本
  • 遺言者本人の親権者や成年後見人などの法定代理人
② 変更の届出ができる法務局(遺言書保管所)

全国の全ての遺言保管所(法務局)

③ 必要書類など
  • 届出者の身分証明書のコピー
  • 遺言者本人に変更が生じた場合
    変更が生じた証明書(住民票の写し、戸籍謄本など) 
    保管時から氏名や住所、本籍など変更事項がある場合で、変更の届出をしていないとき
  • 受遺者(相続人)や遺言執行者に変更が生じた場合
    不要
  • 親権者や成年後見人などの法定代理人が届け出る場合
    戸籍謄本(親権者)や登記事項証明書(成年後見)(作成後3か月以内)
  • 手数料 不要
④ 変更届出書を作成する

変更届出書は遺言書保管所の窓口や法務省のホームページで取得できる。

変更届出書 (記載例・注意事項

変更届出書には、遺言者の氏名、住所、本籍、筆頭者の氏名、生年月日などの自身の情報を記載するほか、遺言が保管されている遺言保管所の名称と保管番号などを記載する必要があるので、保管手続時に交付された保管証があると簡単である

⑤ 変更の届出の方法
  • 遺言書保管所(法務局)に対して窓口へ提出または郵送
  • 提出する場合には、遺言書保管所に予約したうえで窓口に行く。

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