相続と遺言

相続放棄|決して間違えていけない大切な3つのこと

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債務の遺産分割は債権者に対抗できない

相続放棄について勘違いして覚えていると大変なことになる3つのこと

依頼者の方と相談をしていると、かなりの頻度で相続放棄について、勘違いされていることがあります。そのなかで勘違いして覚えていると、後で取り返しがつかない決して間違えてはいけない3つのことをご紹介いたします。相続放棄とは何か知りたい方は「相続放棄|そもそも相続放棄ってどういうこと?」をご覧ください。

 

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  1. 遺産を相続しないのと相続放棄は全く異なるもの
  2. 遺産を相続しなくても借金などの債務は相続する
  3. 借金などの債務を相続しない方法は!?
  4. 限定承認という方法もある!
  5. 相続放棄ができる期間は死んだときから3ヶ月以内ではない
  6. 熟慮期間とは何ですか?
  7. 相続を「単純承認」した後は、相続放棄できない
  8. 相続人の相続人はいつまで手続すればいいの?
  9. 生前に相続放棄をしなさいと言われた!

01.遺産を相続しないのと相続放棄は全く異なるもの。

001.遺産を相続しなくとも借金などの債務は相続する。

被相続人が亡くなった後に、相続人全員で相談した結果、遺産を他の相続人である「長男」に相続させて、自分は遺産を受取らないということはよくあることです。多分、相続人同士の話し合いのときに、「遺産はいらないよ。その代わり借金についても全部兄が相続しなよ。私は相続放棄するわ。」というような会話がなされていたのだと想像できます。 債務の遺産分割は債権者に対抗できない

このように、話し合いによって自分自身が遺産も借金も相続していないので相続放棄したと思えてしまうのですが、法律上は遺産分割協議によって遺産を取得していない状態にあるだけです。相続人全員による遺産分割協議の効力は、相続人間では有効であり、確かに不動産や預金などのプラスの財産については相続人全員の意思が優先されます。しかし借金などのマイナスの財産については、債権者である金融機関等の承諾が得られなければ、その分配の方法は債権者に対しては、対抗することはできません。そして債権者は、遺産分割協議の決定に係わらず、借金等などの債務について、法定相続分の割合に応じて各相続人に対して請求が可能となります。今回の事例では債権者は長女と次女にそれぞれ400万円の返済を請求することが可能です。

これは、遺産分割によって債権者の権利を害することがないようにするためなのですが、プラスの財産を受取らない相続人にとっては、困ったことになってしまいます。もちろん債権者から請求を受けた相続人は、法定相続分の借金を返済した後に、遺産分割で借金を相続すると決めた長男に請求することは可能なのですが、直ぐに返済してもらえるかは長男の経済状況次第です。

002.借金などの債務を相続しない方法は?

でば、どのようにすれば、借金などの債務を相続しないで済むのでしょうか?

ひとつは、債権者の承諾を得ることです。債権者としても借金等が全額返済されればいいのですから、借金の返済の原資となるプラスの相続財産を取得する者が、借金を全て負うことについては、前向きに考えてもらえる可能性が高いです。遺産分割協議の方向性が決まりましたら、債務を負担する予定の相続人と一緒に金融機関に行って相談することをお勧めします。

もし金融機関等から承諾を得ることができなかった場合は、どうすればよいでしょうか。もし一切のプラスの財産を相続する予定がないのであれば、相続放棄をすることが望ましいでしょう。相続放棄をすると、相続人ではなくなりますので、債務についても一切負担することはありません。しかし残念ながら遺産を受取ることができなくなりますので、よくお考え下さい。

金融機関の承諾も得られなかった、相続放棄も困るという場合には、もし万一のことに備えて、財産を取得する予定である長男の資産に対して担保を取るという方法も考えられます。もしくは借金の請求が考えられることを前提に遺産分割について再度協議をやり直すという方法もあります。

いずれにせよ、遺産を受取らなくとも、借金などの債務は相続する可能性があることは覚えておいて、そのための対策をきちんと立てるようにしてください。

003.限定承認という手もある。

限定承認とは、マイナスの財産がプラスの財産よりも多いときに、プラス財産の範囲内でマイナス財産を相続するもので、その範囲を超えたマイナス財産は相続されません。つまり限定承認を利用することで借金などの債務を相続しなくてもいいのですが、プラスの財産はマイナス財産の弁済に充当されますので、個人的に財産を提供しない限り、手元にプラス財産は残りません。あまり利用されることが少ない手続なので、この手続については別の機会にご紹介いたします。

02.相続放棄ができる期間は相続の時から3ヶ月以内ではない?

001.熟慮期間とは何ですか?

熟慮期間とは、相続が開始されてから、単純承認又は限定承認、相続放棄をすることができる期間のことで、相続人は熟慮期間中に、被相続人の相続財産を調査して、相続するのかどうか決める必要があるのです。そして、相続放棄ができるのは、被相続人が死亡したときから、3ヶ月以内に裁判所に手続をする必要があるのですが、法律上はもっと詳しく書かれています。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続について、単純もしくは限定の承認又は放棄をしなければならない。(民法915条1項本文)

要するに、相続放棄をするための期間の起算点は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とされています。

これには、①被相続人が死亡したことを知ったときという意味と②自分が法定相続人であるということを知ったときという意味、③相続財産が存在することを知ったときという意味もあります。

①死亡したことを知ったとき

たとえば、被相続人と同居していなく、疎遠であった場合などで、被相続人の死亡の事実を知らなかったときには、それを知ってから3ヶ月以内に手続が必要ということです。

②自分が法定相続人であることを知ったとき

誰が法定相続人であるかというのは、被相続人の死亡時の家族構成や相続放棄などによって、異なります。被相続人の子どもが全員相続放棄をした場合などには、法定相続人の地位は次の順位の父母もしくは兄弟姉妹に移ることになります。このように前順位の法定相続人が相続放棄したことを知り、自分が法定相続人になったときが起算日となります。

③相続財産が存在することを知ったとき

被相続人には不動産や預金などの相続財産が全くないから、相続手続を一切行わなかった場合などで、後日、債権者から借金の請求があって相続債務があったことを気付いたときなどが該当します。但し、これは簡単には認められません。これを簡単に認めては、債権者の権利を害することになるからです。被相続人との関係が疎遠であったりして、相続財産の調査を期待することが困難な事情があり、全く相続財産がないと考えるに相当な理由があるときなどに認められます。

原則は熟慮期間中に手続をする必要がありますので、もし熟慮期間を超えての相続放棄を考えている場合には、家庭裁判所の判断も決して統一されているとはいえませんし、それぞれの事情によってもその可否が分かれますので、専門家にご相談ください。

002.相続を「単純承認」した後は、相続放棄できない!

相続放棄は、相続を「単純承認」した後には、することはできません。「限定承認」は上記で説明済みですが、相続を「単純承認」するというのは、どういうことでしょうか?

簡単に説明すると、「相続することを認める。」ということで、認めるには、積極的に「私は相続します。」と宣言する必要はありません。相続を承認するには、「相続を知ったときから3ヶ月以内になんら手続をしない。」つまり相続放棄や限定承認の手続きを期間内に行わなければ、よいのです。もちろん意思表示によって積極的に承認することも可能であるといわれています。(大判明41.3.9)

さらに、相続人が、相続財産の全部又は一部を処分したときは、相続を単純承認したものとみなされます。たとえば、相続財産である不動産を売却したり、現金を浪費してしまったりした場合には、第三者からみれば、「あの相続人は相続したのだな。」と普通は考えますので、相続人が「承認します。相続します。」と言っていなくても、法律上、承認したものとみなすことになっています。

そして、一度相続を承認することになると、たとえ3ヶ月以内であっても、原則として、その後に、相続放棄の手続をすることはできません。よって3ヶ月以内に相続放棄の手続をしたとしても、その前に相続財産に手をつけて消費してしまうと、相続放棄は認められない場合があるので、注意が必要です。

なお、相続財産である家屋が雨漏りしていて、その修理をした場合には、その行為は処分ではなく、保存行為をしたことになりますので、この場合には承認したことになりませんので、ご安心ください。

003.相続人が相続の承認や放棄をしないで死亡した場合、相続人の相続人はいつまでに手続をすればいいの?

相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、熟慮期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。(916条)

少し分かり難いので、イラストを見ながら考えましょう。

相続人の相続人はいつまで相続放棄できるの?

たとえば、被相続人祖母の子である父は相続人ですが、父が祖母の相続について承認又は放棄をしないで死亡した場合、父の相続人である子の本人は、父の死亡後から3ヶ月以内に祖母の相続について放棄するかどうか決めればよく、そして父の相続についても同じ時期までに決めればいいことになっています。

また、本人は父の相続を放棄する前であれば、祖母の相続について承認又は放棄をすることができ、その後父の相続について承認又は放棄をすることができます。しかし先に父の相続を放棄してしまうと、本人は父の相続人ではなくなりますので、父の祖母の相続については、承認も相続もすることはできません。

03.生前に相続放棄をしなさいと言われた!

「両親から『全財産は長男に相続させるから、あなたたちは今すぐ相続放棄して!』と言われました。」は、ご相談を受けるうちのよくある間違いです。

相続放棄の手続きは、被相続人となる人が生きている間には、することはできません。もちろん生前の単純承認の意思表示も効力を有しません。たぶん両親は、「遺留分の放棄」と「相続放棄」を勘違いしているのだと思われます。

遺留分とは一定の相続人が有する最低限保証されるべき相続分ことです。たとえば、母と長男、長女の3人家族の場合、母が遺言で「全財産を長男に相続させる。」と残したとき、長男は全財産を受取ることができます。しかし長女は自分が欲しいと望めば、ある一定の割合の財産を遺留分として長男に請求することができます。つまり今回の事例では、たとえ被相続人である母が遺言で全財産を長男に相続させても、遺言に反して長女は全財産のうち法定相続分の2分の1に当たる6分の1の財産を受取ることができるのです。この長女の権利を遺留分といいます。

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そして、遺留分の放棄について、相続が発生する前にすることが可能です。ただし被相続人が圧力を加えて遺留分の放棄を強要させるおそれがあるので、相続開始前の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可が必要となっています。

 

 

 

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