民法改正

民法(債権法)改正|賃貸借

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民法改正 賃貸借の対抗力や敷金、原状回復義務について明文化

対抗力や敷金、原状回復義務について明文化

1. 賃貸借の存続期間

ポイント

  • 賃貸借の存続期間が現行民法では上限20年とされていたが、上限を50年に延長します。

理由

  • 技術の進歩により長期間にわたる賃借物の維持・メンテナンスが可能となっており、賃借物の耐用年数が延びている。
  • 建物や工作物所有目的以外の太陽光発電設備やプラントの重機・工作機械など、20年を超える賃貸借契約の必要性が求められていた。

実務への影響

  • 建物賃貸借や建物所有目的の土地賃借では借地借家法、工作物所有目的等の地上権では、賃貸借の存続期間の上限はありません。

2.不動産賃貸借の対抗力、賃貸人たる地位の移転等

ポイント

  • 登記したことや目的物の引渡しを受けるなどして賃貸借の対抗要件を具備しているときは、不動産の譲渡があっても、不動産の賃貸人たる地位は、譲受人に当然に移転する判例を明文化しました。(大判大正10年5月30日)
  • 不動産の譲渡があっても、旧所有者と新所有者との間の合意によって賃貸人の地位を旧所有者に留めることができる要件(「賃貸人の地位の留保の合意」と「旧所有者と新所有者の賃貸借契約の合意」)について定めました。
  • 不動産の譲渡等により賃貸人の地位が移転したときは、敷金返還債務や必要費及び有益費の償還債務についても、承継されることを明文化しました。(最判昭和46年2月19日)

賃貸人たる地位の移転等に伴う権利義務の移転

理由

  • 現行民法605条には、賃借権の対抗問題と賃貸人の地位の移転のことの2つの規律が含まれていたが、同一条文で定めることは不適切であるとの要望を踏まえ、賃貸人たる地位の当然承継に関する判例法理を独立しました。
  • 賃貸人たる地位の留保の要件については当事者の合意によってのみでは足りないとする判例があったが、信託等の実務のニーズに応えるため新たに定めた。
  • 賃貸人たる地位の移転の場面における①敷金返還債務及び②費用償還債務の移転について、現行民法に規定がなかったため、これらについて規定しました。

実務への影響

  • 賃貸人たる地位の移転の場面における、敷金返還債務について旧所有者が譲渡する前に生じた賃料等弁済に敷金を充当した残額が移転するとするのか、それとも全額の返還債務が移転するとするのかの充当の関係については、解釈や個別の合意に委ねるとしました。

3.敷 金

ポイント

  • 敷金の定義や敷金返還債務の発生要件など敷金に関する基本的な規定を明文化しました。(大判大正15年7月12日、最判昭和48年2月2日)
  • 敷金返還債務は賃貸借が終了し、かつ目的物が引き渡されたときに生じるとしている判例を明文化した。(最判昭和48年2月2日)
  • 賃貸人の意思表示によって敷金を弁済充当することにつき、判例を明文化しました。(大判昭和5年3月10日)

理由

  • 現行民法には、敷金に関する規定はあるものの、敷金の定義、敷金返還債務の発生要件や発生の範囲、充当関係など、基本的な事項に関する規定は設けられていないため、敷金に関する法律関係には解釈上疑義が生じていた。

実務への影響

  • これまでの判例や一般の理解を明文化したものであるので、実務への影響は少ないと考えられます。

4.賃貸人の修繕義務と賃借人の修繕権限

ポイント

  • 原則として、賃貸人が修繕義務を負っているのが、例外として賃借人の責任によって生じた修繕の責任は賃借人が負うことを明確化しました。
  • 賃借人が修繕できる範囲を明文化しました。賃借人が修繕につき賃貸人に通知又は賃貸人が修繕を必要であることを知ってから、相当期間が経過しても修繕しないとき又は急迫の事情があるときと規律しました。

理由

  • 現行民法606条1項では、賃貸人の修繕義務を規定しているが、賃借人に帰責事由がある場合、賃貸人の修繕義務について規定されていませんでした。
  • 現行民法では、賃借人の修繕権限については、必要費の償還請求権を定めるのみで、これを明示する規定がありませんでした。

5.賃貸借終了後の収去義務及び原状回復義務

ポイント

  • 賃借人の収去義務は、賃貸借契約における重要な義務であることからこれを明文化するとともに、収去義務が及ぶ附属物の範囲についても明文化した。
  • 賃借人が負う原状回復義務の具体的内容について規定し、通常損耗、経年変化は原則として原状回復に含まないとする点につき。判例を明文化した。(最判平成17年12月16日)

賃貸借契約終了の原状回復義務

理由

  • 現行民法では、賃借人の収去権のみ明記されているが、むしろ収去義務は賃借人の賃貸借契約における重要な義務であることを明確にしました。
  • 現行民法では、賃借人が負う原状回復義務の具体的な内容について規定がなく、賃借人は特段の事由がない限り、通常損耗や経年変化の原状回復義務を負わないとする判例を明文化しました。

実務への影響

  • 原状回復義務の範囲については、当事者の合意によりその範囲を広げることはできます。そしてその範囲と内容は具体的に明らかにしていることが必要と考えられます。住居を目的とする賃貸約契約については国交省できていされているガイドラインに従うことが実務的には多いが、事務所や店舗については抽象的な記載に留まっている事案が多いので注意が必要です。

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改正条文

(賃貸借の存続期間)
第604条 賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。

2 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から50年を超えることができない。

(不動産賃貸借の対抗力)
第605条 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

(不動産の賃貸人たる地位の移転)
第605条の2 前条、借地借家法第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。

2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。

3 第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。

4 第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。

(合意による不動産の賃貸人たる地位の移転)
第605条の3 不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合においては、前条第3項及び第4項の規定を準用する。

(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等)
第605条の4 不動産の賃借人は、第605条の2第1項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
 一 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
 二 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求

(賃貸人による修繕等)
第606条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。

2 (略)

(賃借人による修繕)
第607条の2 賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
 一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
 二 急迫の事情があるとき。

(減収による賃料の減額請求)
第609条 耕作又は牧畜を目的とする土地の賃借人は、不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときは、その収益の額に至るまで、賃料の減額を請求することができる。

(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)
第611条 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

(転貸の効果)
第613条 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。

2 (略)

3 賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。

(賃借人による使用及び収益)
第606条 第594条第1項の規定は、賃貸借について準用する。

(賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了)
第606条の2 賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。

(賃貸借の更新の推定等)
第609条 (略)

2 従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、第622条の2第1項に規定する敷金については、この限りでない。

(賃貸借の解除の効力)
第620条 賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。

(賃借人の原状回復義務)
第621条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

(使用貸借の規定の準用)
第622条 第597条第1項、第599条第1項及び第2項並びに第600条の規定は、賃貸借について準用する。

第四款 敷 金
第622条の2 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
 一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
 二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。

2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

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