民法改正

民法(債権法)改正|債権譲渡

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譲渡禁止特約の効力は絶対効から相対効へ

譲渡禁止特約の効力が絶対効から相対効に

1.債権の譲渡禁止特約から譲渡制限特約へ

ポイント

  • 債権譲渡を禁ずる特約があっても、譲渡人と譲受人との間ではその譲渡は有効であることとなりました。この場合、債務者は悪意・重過失の譲受人に対しては、弁済を拒むことができます。
  • 譲受人が悪意・重過失のとき、譲受人は債務者に対して、譲渡人に弁済するように催告し、期間内に債務者が弁済しなかった場合は、譲受人は債務者に対して自ら請求することができます。
  • 債務者は、譲渡制限特約が付されている債務の弁済について、譲受人の善意悪意にかかわりなく、譲渡の事実のみをもって、供託することができます。
  • 預金債権の場合、譲渡制限特約が付されていれば、悪意・重過失の譲受人に対して、譲渡制限特約の効力を主張することができます。

債権の譲渡禁止特約から譲渡制限特約へ

譲渡制限の意思表示が付された債権の債務者の供託

理由

  • 現行の譲渡禁止特約の趣旨は、債務者を保護するためとされていたが、これを債務者にとって弁済の相手方を固定するものであるとする整理をし、債権譲渡による資金調達を円滑にする観点から改正します。
  • 譲渡制限特約を悪意又は重過失の譲受人に対抗できない場合において、債権は既に移転しているから譲渡人は取立権限を失っていることから、譲受人から債務者に対する履行の催告の権限を与えることにしました。
  • 譲渡制限特約付債権であっても、譲受人の善意悪意にかかわらず、債権は移転することになることから、債務者が弁済の相手方の判断に迷う事態は生じ得ることから、新たに供託することができ場合を設けました。
  • 預金債権については、現行民法の規律を維持すべきという考え方に基づき、譲渡禁止特約とすることになりました。

実務への影響

  • 債権譲渡が、債務者と譲渡人との間においては、債務不履行となる場合があるのでは?との批判もあります。
  • 供託した金銭は譲受人だけが還付請求することができるので、現行の制度(債権者不確知)とは異なることとなります。
  • 預貯金債権の範囲が、「預金口座又は貯金口座に係わる預金又は貯金に係わる債権」と広く定義されていることに注意が必要です。

2.将来債権の譲渡

ポイント

  • 債権の譲渡は、既に発生している債権だけでなく、将来発生する債権についても対象となり、譲受人が具体的に発生する債権を当然に取得するとする判例を明文化しました。(最判平成11年1月29日、最判平成19年2月15日)
  • 将来債権が譲渡された後であっても、債務者への通知又は承諾のときまでに、譲渡制限特約が付された場合は、譲受人に対して特約を対抗できることになりました。

理由

  • 現行民法は、将来債権について規律がなかったことから、これを明文化しました。
  • 将来債権が譲渡された後で、譲渡禁止特約が付された場合に、債務者は譲受人に対して対抗できるか争いがありました。債権譲渡を知らない債務者を保護する一方、譲受人はそのリスクを考慮できることを理由としています。

実務への影響

  • 譲受人としては、将来債権を譲り受ける際には、譲渡人と債務者の間で譲渡禁止特約が付されるリスクがあることを認識しておく必要があります。

3.債権譲渡と債務者の抗弁

ポイント

  • 債権譲渡があったときに、債務者が異議をとどめないで承諾した場合は、譲渡人に対抗できる事由があっても、譲受人には対抗できないとする規定を廃止し、債務者の意思表示により抗弁が切断されるという規定が新たに設けられます。

理由

  • 現行民法では、債務者が単に債権が譲渡されたことを認識した旨の通知をしただけで抗弁の喪失という債務者にとって予測しない効果が発生していたことについて、強い批判がありました。

実務への影響

  • 今後は、債務者が明確に抗弁を放棄する旨の意思表示をするまでは、抗弁による対抗を受ける可能性が残ることになるので、債権譲渡を日常的に行っているクレジットカード業界においては大きな影響が生じると言われています。

4.債権譲渡と相殺

ポイント

  • 債務者が債権譲渡(対抗要件具備)前から有している債権を自働債権とする相殺は、譲受人に対抗できることを明文化しました。
  • 債務者が債権譲渡(対抗要件具備)の後に取得した債権であっても、その債権が①対抗要件具備より前の原因に基づいて生じた債権及び②譲受人の取得する債権の発生原因である契約に基づいて生じたものであるときは、相殺をもって譲受人に対抗できることを明確化しました。

債権譲渡と相殺

理由

  • 相殺の抗弁を債権の譲受人に対して主張できる範囲については、学説上、見解が対立しているが、明文がなく、立法による解決が望まれていました。

実務への影響

  • 対抗要件具備のときより前に取得した債権であれば、弁済期が譲渡された債権の弁済期より後に到来する場合でも、相殺できます。
  • 対抗要件具備の前に締結した保証契約に基づき、債権譲渡の後に保証人が弁済したことによる求償債権については、債務者は相殺をもって譲受人に対して対抗できます。
  • 将来の売買代金請求権が譲渡された場合は、その売買契約の目的物の瑕疵を理由とする買主の損害賠償請求権については、債務者は相殺をもって譲受人に対して対抗できます。

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改正条文

(債権の譲渡性)
第466条 (略)

2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。

4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。 

(譲渡制限の意思表示がされた債権に係る債務者の供託)
第466条の2 債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。

2 前項の規定により供託をした債務者は、遅滞なく、譲渡人及び譲受人に供託の通知をしなければならない。

3 第1項の規定により供託をした金銭は、譲受人に限り、還付を請求することができる。 

第466条の3 前条第1項に規定する場合において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人(同項の債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者その他の第三者に対抗することができるものに限る。)は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができる。この場合においては、同条第2項及び第3項の規定を準用する。

(譲渡制限の意思表示がされた債権の差押え)
第466条の4 第466条第3項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。

2 前項の規定にかかわらず、譲受人その他の第三者が譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合において、その債権者が同項の債権に対する強制執行をしたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができる。 

(預金債権又は貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力)
第466条の5 預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第466条第2項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。

2 前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。 

(将来債権の譲渡性)
第466条の6 債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。

2 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。

3 前項に規定する場合において、譲渡人が次条の規定による通知をし、又は債務者が同条の規定による承諾をした時(以下「対抗要件具備時」という。)までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、第466条第3項(譲渡制限の意思表示がされた債権が預貯金債権の場合にあっては、前条第1項)の規定を適用する。 

(債権の譲渡の対抗要件)
第467条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

2 (略) 

(債権の譲渡における債務者の抗弁)
第468条 債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

2  第466条第4項の場合における前項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条第4項の相当の期間を経過した時」とし、第466条の3の場合における同項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条の3の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。

(債権の譲渡における相殺権)
第469条 債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。

2 債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が次に掲げるものであるときは、前項と同様とする。ただし、債務者が対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
 一 対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権
 二 前号に掲げるもののほか、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権

3 第466条第4項の場合における前2項の規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条第4項の相当の期間を経過した時」とし、第466条の3の場合におけるこれらの規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条の3の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。

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