民法改正

民法(債権法)改正|詐害行為取消権

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詐害行為取消の要件と対象となる範囲を限定し明確化

破産法の規律に合わせて、
成立の要件と対象となる範囲を限定し明確化

1.詐害行為として取り消される範囲

ポイント

  • 債務者が、財産の処分行為をした場合に、受益者から相当の対価を取得しているときは、次の要件をすべて満たす場合に限り詐害行為取消請求をすることができる。
    • 財産処分は隠匿等処分をする恐れを現に生じさせているとき
    • 債務者が行為当時に隠匿処分する意思を有しているとき
    • 受益者が行為当時に債務者が隠匿処分する意思を有していたことを知っていたとき

相当の対価を得てした財産

  • 債務者が、既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅行為(以下「弁済等」という。)をした場合に、次の要件をすべて満たす場合に限り詐害行為取消請求をすることができる。
    • 債務者が支払い不能(支払い能力を欠くために、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できない状態)の時に行なわれたもの
    • 債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行なわれたとき

特定の債権者に対する担保の供与又は債務の消滅行為等

  • 債務者が、弁済等をした場合に、弁済期が到来していない債務など債務者の義務でないのに弁済等が行なわれたときは、次の要件をすべて満たす場合に限り詐害行為取消請求をすることができる。
    • 債務者が支払い不能になる30日以内に行なわれたもの
    • 債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行なわれたとき

特定の債権者に対する担保の供与又は債務の消滅行為等 の処分行為その2

  • 債務者が、過大な代物弁済等によって弁済等をした場合に、受益者の受けた給付の課額が消滅した債務の額に相当する部分以外の部分(過大な部分)について、424条の詐害行為取消権の要件を満たすときには、その過大である部分に限って一部取消をすることができる。

過大な代物弁済等の取消権の処分行為

理由

  • 詐害行為取消権の要件は概括的であり、不明確かつ広範であるとの指摘がされていたため、その要件を明確かつ限定的にする必要があった。
  • 破産法の改正によって、否認の対象とならない行為が詐害行為取消しの対象となる現象(いわゆる逆転現象)が生じていたため、改正民法では行為ごとの類型化を行なったうえで、要件について破産法の規律と合わせるようにした。

実務への影響

  • 改正民法では、破産法の規律と合わせるようにその整合性を考慮したものとなっているが、その要件について破産法と異なる点に注意する必要があります。たとえば、債権者の内部者の悪意推定規定(破産法161条第2項など)や債務者と受益者の通謀及び害意要件など破産法の否認権の適用よりも厳しく実務上どのように運用認定されるのか注意が必要と考えられています。

2.転得者に対する詐害行為取消権の要件

ポイント

  • 転得者がいる場合、受益者及び転得者(転得者が複数の場合には、全ての転得者)が害意について悪意でなければ、詐害行為取消請求することができません。
  • 転得者が他の転得者から転得した場合、転得者が悪意であってもその前の転得者が善意のときは、詐害行為取消請求することができません。

転得者に対する詐害行為取消権の要件

理由

  • 破産法の規律と合わせるように改正した。判例(最判昭和49年12月12日)では受益者が善意であっても転得者が悪意であれば、詐害行為取消権の行使ができたことから、これを覆すものであり取り消し請求の行使の要件が厳しくなります。

3.詐害行為取消権の行使の方法

ポイント

  • 債権者は、受益者及び転得者に対する詐害行為取消請求において、原則、現物返還を例外として価額償還をすることができることとする判例の明文化しました。
  • 債権者代位権の場合と同様に、訴えを提起したときは、遅滞なく債務者に対して訴訟告知する必要があります。

理由

  • 債権者が訴えた訴訟の判決の効力は、債務者に及ぶこととなるので、債務者も訴訟に参加できる機会を確保する必要があるため。債務者保護の要請のため。

4.詐害行為取消しの効果と反対給付

ポイント

  • 詐害行為取消しの効果は債務者には及ばなかったが、債務者に訴訟告知等をすることを前提に、これを改めて債務者及び債権者に対して及ぶように改正しました。
  • 債務者に取消しの効果が及ぶことになることから、受益者は不当利得等の手段を用いなくとも、債務者に対して直接反対給付の請求をすることができるようになりました。また、受益者の債務者に対する債権は原状に復することとなります。

詐害行為取消しの効果と反対給付

理由

  • 破産法の規律と合わせるように改正しました。詐害行為取消しの効果が債務者に及ぶこととなったため、受益者は債務者に対して反対給付が可能になり、また受益者の債権も原状回復されることとなります。

5.詐害行為取消権の期間の制限

ポイント

  • 詐害行為取消権の行使は、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知ったときから2年、もしくは行為のときから10年を経過した場合には、することができなくなります。
  • この行使期間の制限は消滅時効とするのではなく、除斥期間となるので時効の更新や完成の猶予などの規定は適用されないので注意が必要です。

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改正条文

第1目 詐害行為取消権の要件

(詐害行為取消請求)
第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。

2 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。

3 債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。

4 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。

(相当の対価を得てした財産の処分行為の特則)
第424条の2 債務者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、受益者から相当の対価を取得しているときは、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。

 一 その行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分(以下この条において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。

 二 債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。

 三 受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。

(特定の債権者に対する担保の供与等の特則)
第424条の3 債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。

 一 その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。

 二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

2 前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。

 一 その行為が、債務者が支払不能になる前30日以内に行われたものであること。

 二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

(過大な代物弁済等の特則)
第424条の4 債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、第424条に規定する要件に該当するときは、債権者は、前条第1項の規定にかかわらず、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができる。

(転得者に対する詐害行為取消請求)
第424条の5 債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。

 一 その転得者が受益者から転得した者である場合 その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。

 二 その転得者が他の転得者から転得した者である場合 その転得者及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。

第2目 詐害行為取消権の行使の方法等

(財産の返還又は価額の償還の請求)
第424条の6 債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。

2 債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。

(被告及び訴訟告知)
第424条の7 詐害行為取消請求に係る訴えについては、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者を被告とする。

 一 受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え 受益者

 二 転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え その詐害行為取消請求の相手方である転得者

2 債権者は、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。

(詐害行為の取消しの範囲)
第424条の8 債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができる。

2 債権者が第424条の6第1項後段又は第2項後段の規定により価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

(債権者への支払又は引渡し)
第424条の9 債権者は、第424条の6第1項前段又は第2項前段の規定により受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。この場合において、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをすることを要しない。

2 債権者が第424条の6第1項後段又は第2項後段の規定により受益者又は転得者に対して価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

第3目 詐害行為取消権の行使の効果

(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)
第425条 詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。

(債務者の受けた反対給付に関する受益者の権利)
第425条の2 債務者がした財産の処分に関する行為(債務の消滅に関する行為を除く。)が取り消されたときは、受益者は、債務者に対し、その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができる。債務者がその反対給付の返還をすることが困難であるときは、受益者は、その価額の償還を請求することができる。

(受益者の債権の回復)
第425条の3 債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第424条の4の規定により取り消された場合を除く。)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する。

(詐害行為取消請求を受けた転得者の権利)
第425条の4 債務者がした行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたときは、その転得者は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。ただし、その転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度とする。

 一 第425条の2に規定する行為が取り消された場合 その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば同条の規定により生ずべき受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権又はその価額の償還請求権

 二 前条に規定する行為が取り消された場合(第424条の4の規定により取り消された場合を除く。) その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば前条の規定により回復すべき受益者の債務者に対する債権

第4目 詐害行為取消権の期間の制限

第426条 詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から二年を経過したときは、提起することができない。行為の時から十年を経過したときも、同様とする。

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