民法改正

民法(債権法)改正|契約解除

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債務者の帰責性なくとも契約解除が可能
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催告解除、無催告解除の要件として
債務者の帰責事由は不要

1.催告解除の要件

ポイント

  • 債務不履行による催告解除をする場合、債務者の帰責事由を要件としないことを明確化しました。債務者の帰責事由は解除に伴う損害賠償請求をするための要件とされます。
  • 契約をした目的を達成することができる場合であっても、債務不履行の態様が軽微であるといえないときは、催告解除ができることを明らかにしました。

契約解除と債務不履行の態様

理由

  • 解除に関する伝統的な通説では、債務不履行による解除には、債務者の帰責事由を要件としていました。しかし改正民法では、解除制度について、履行を怠った債務者に対する制裁としての制度でなく、契約の拘束力から解放する制度であるという理解を前提した考え方を採用しました。
  • 現行民法では、催告解除の要件として、債務不履行の程度に言及していませんでしたが、債務不履行の程度や態様に限定を加える判例法理を明文化することとしました。(最判昭和36年11月21日、最判昭和43年2月23日)

実務への影響

  • 債務不履行が機微であることの立証責任は、債務者側が負うこととなります。

2.無催告解除の要件

ポイント

  • 無催告解除をする場合、債務者の帰責事由がなくともできるようになりました。債務者に帰責事由がない場合は、損害賠償請求はできないが、解除はできることとなります。
  • 履行不能による解除に類似するものとして、債務者がその債務の履行をしない旨の確定的な意思の表示をした場合にも、無催告解除を認めるように改めました。
  • 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者の債務の一部の確定的履行拒絶がある場合で、その残部のみでは契約の目的が達成できないときは、契約の全部について解除することができることを明らかにしました。

理由

  • 現行民法では、無催告解除ができる場合がかなり限定されている。また履行不能に関して債務者の帰責事由がないと解除できないとされており、解除の範囲が全部か一部なのかなども不明確である。改正民法では、債務者の帰責事由を不要とするとともに、契約の全部解除か一部解除かを分けて定め整理しました。

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改正条文

(催告による解除)
第541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

(催告によらない解除)
第542条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
 一 債務の全部の履行が不能であるとき。
 二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
 三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
 四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
 五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。

2 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
 一 債務の一部の履行が不能であるとき。
 二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
第543条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前2条の規定による契約の解除をすることができない。

(解除の効果)
第545条 (略)

2 (略)

3 第1項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。

4 (略)

 (解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅)
第548条 解除権を有する者が故意若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。

(第2項 削除)

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