民法改正

民法(債権法)改正|相殺

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民法改正 相殺できる範囲が拡大
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相殺できる範囲が拡大

1. 不法行為債権等を受働債権とする相殺の禁止

ポイント

  • 不法行為によって生じた債務であっても、人の生命身体の侵害ではなく、かつ過失によるものであれば、加害者でも相殺できるようになります。

不法行為債務と相殺の可否

理由

  • 現行民法では、金銭賠償等を現実に給付させることによる被害者の保護と不法行為の発生の防止を目的として、加害者からの相殺は禁止されていたが、相殺禁止の範囲が広範すぎるとの批判がありました。
  • 物損交通事故による損害を想定しています。

実務への影響

  • 工作物責任に基づく損害賠償債務については、悪意による不法行為に該当しないので、相殺禁止の対象外となります。
  • 人の生命又は身体の侵害による損害賠償債務には、不法行為を原因とするもののほか、債務不履行によって生じた債務も含まれることから、相殺禁止の範囲が拡大しているとの見解もあります。

2.差押えと相殺の可否

ポイント

  • 差押えを受けた債権に対して、差押え前に取得した債権で相殺することはでき、差押え後に取得した債権では、相殺することはできません。差押え時に相殺適状にある必要はなく、自働債権と受働債権の弁済期の先後は問われません。
  • たとえ差押え後に取得した債権であっても、差押え前の原因に基づいて生じた債権であれば、被差押え債権と相殺できます。

差押え債権と相殺の可否

理由

  • 相殺の可否について、判例の無制限説を採用、明文化したものです。(最判昭45年6月24日)
  • 現行民法では、差押え時よりも破産手続き開始時の方が相殺を対抗できる範囲が拡張されているが、この破産法上の規律との統一化を図るものです。

実務への影響

  • たとえば、委託を受けた保証人に対する主たる債務者の債権が差押えられ、差押え後に、保証債務を履行したことにより生じた事後求償権と主たる債務者の差押えられた債権とを相殺することはできます。
  • 差押え前の銀行取引約定書に基づく、差押え後の手形買取債権と差押え債権との相殺は可能となります。

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改正条文

(相殺の要件等)
第505条 (略)

2 前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。

(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第509条 次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
 一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
 二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)

(差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第511条 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。

2 前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。 

(相殺の充当)
第512条 債権者が債務者に対して有する一個又は数個の債権と、債権者が債務者に対して負担する一個又は数個の債務について、債権者が相殺の意思表示をした場合において、当事者が別段の合意をしなかったときは、債権者の有する債権とその負担する債務は、相殺に適するようになった時期の順序に従って、その対当額について相殺によって消滅する。

2 前項の場合において、相殺をする債権者の有する債権がその負担する債務の全部を消滅させるのに足りないときであって、当事者が別段の合意をしなかったときは、次に掲げるところによる。
 一 債権者が数個の債務を負担するとき(次号に規定する場合を除く。)は、第488条第4項第二号から第四号までの規定を準用する。
 二 債権者が負担する一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべきときは、第489条の規定を準用する。この場合において、同条第2項中「前条」とあるのは、「前条第4項第二号から第四号まで」と読み替えるものとする。

3 第1項の場合において、相殺をする債権者の負担する債務がその有する債権の全部を消滅させるのに足りないときは、前項の規定を準用する。

第512条の2 債権者が債務者に対して有する債権に、一個の債権の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺については、前条の規定を準用する。債権者が債務者に対して負担する債務に、一個の債務の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺についても、同様とする。

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